8月7日 旅122日目 晴れ

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この日は用事を済ませてほぼ一日フェリーターミナルに居ました。

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ペダルがキャップ飛んでベアリング出てて死んでたんで買い替えました

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三ヶ島のペダルに

そのまま夜になり花火を見ます

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祭りもこの花火でお終いです

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目を開けると、ぼんやり蛍光灯が光っている。
古くなっているのか、少し紫色に濁る蛍光灯の光でも起きぬけの目には差し込むように痛かった。
「うぅん」
声にならない声をあげて体を起こす。
服は昨日のままで、晩ご飯も食べていない、お腹はむしろ減ったというより、妙な痛みすらある。
「そういや、あのまま寝ちゃったんだ」
コンビニの隅でうずくまりながら、昨日の事を思い出す。
「我ながらたいしたものだな」
ぶーんと虫が左上の方を旋回した。

もう旅をでてかれこれ3年。
昨日は地元の街へ帰るために260キロもの道を漕いできた。
あわてて進んでしまったため、野宿場所すらも見つからずコンビニの前で座って時間を潰していたら眠ってしまっていたらしい。
「今日中には帰らないとな…」
昨日無理をして漕いだわりには足は軽かった。
「みゆきと出会ってもうちょうど4年か…」
最後の別れの日も、始めて出会った時と同じように「悲しい顔すんなよ」
と言われてしまった事を思い出して、少し笑ってしまった。


「おい!ジュン!なんて顔してんだ!悲しい顔してたら幸せ逃げちゃうぞ!だから…ジュンくんは行かなきゃ!私のことより…君の大切な夢…見なきゃ!日本、見て周るんでしょ?」
みゆきの声はハキハキしていた。
「でも君を置いてはいけないから、幸せの形はそれだけじゃないよ。」
ジュンは下を向いてボソボソと虫のような声だ。
「一年くらい前、君と出会った頃から今の今まーで!ずーと顔に書いてあるよ!日本一周したいって!私が気づいてないと思った?
いろんなところで、いろんな幸せ拾うって初めて会った時も言ってたよ。
そういうとこも……………好きなんだから………」
みゆきの声は明るくていつもどこか寂しそうだ。

夕方のチャイムが聞こえる。
2人だけの場所、あの初めて出会った海の堤防で2人は話し合っていた。
堤防を見つめるジュンは、つい旅に出たい時の気持ちが蘇っていた。
それをふと口走ってしまったことを後悔しながらも頭の中では、
「男はバカだな。」
よく聞くフレーズが浮かぶと同時に、みゆきの顔を見れなくなっていた。
さっきまで痛いくらいに差し込んでいた日も落ち始めていて、空は薄く紫色にのびている。
初めて会った時からジュンはこのみゆきという女性に対して好感をもっていた。
自分の全てを見せてみたい。
そう思える人はみゆきだけだった。
夕方のチャイムがまだ聞こえる。


堤防に乗る彼女を初めて見上げた時、長く綺麗な黒髪が、夕日で黄色く染められた天使の羽みたいで、この閉鎖された街から飛んで連れ出してくれそうだった。
手で夕日をさえぎって、薄い目で眺める。
オレンジの自転車も見えなくなっていて、ただ彼女だけを見つめてしまった。
「悲しい顔ばっかじゃ幸せをつかめないよ」
突然落ちてきたさっきの声とは違って、透き通るような長い声が耳の奥を通り抜けた。
「ご…ごめん」
急に起こった出来事に戸惑いながらも、自分でも予想外の言葉が降りてきた。
初対面だからかも知れない…
彼女の声がどこか寂しそうだったかもしれない…
それでもこの不思議な出会いの中で何か起こるかもしれない。
天使が降りてきた。
夕日が眩しかった。
ジュンの口は自然と動いていた。

「これから幸せを拾い集めるんだよ。
落としてきた自分のも、これからの幸せも」
夕日に照らされたジュンの顔は、真っ直ぐに彼女を見つめていた。

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